2017-09-23

年取ってから人間はいろいろのことを知るものだ。
私は今人間が歩くということに視線を向けている。人が歩くなど何でもないことで別に何の思考もいらない仕事だが、この3月に転んで以来(念のため私は96歳である)大腿部骨折そしてリハビリで半年になろうとする今も、まだ1人で外を歩く許可が下りていない。1人では手押し車でも危ないということだが、なるほど歩くと何となく不安であり自分の中では“大丈夫”と言いつつも1人歩きはしていない。
2か月以上にも及ぶリハビリ病院で私は人間が歩くということに何と複雑な機構が含まれていることだろうとつくづく思ったものだった。
脚を1っ歩踏み出すにしても、まずバランスをとって立てなければならない。姿勢、目線、背中の筋肉、腰のバランス、そして体重のかけ方、足のもろもろの筋肉の働き、それをつかさどる脳の働き等々“え?お前もか?”というほどの揚句、漸く“立てる“のである。
私は手押し車をのろのろと押しながら、スタスタと歩く人たちの足元を眺めていた。
脚の筋肉1つを動かすためにどれほど数多くの複雑なストレッチが用意されていたことだろう。

室井摩耶子

3 件のコメント:

  1. 岐阜 ムーミンパパ10/07/2017

     飛騨高山の大正10年7月生まれの母への温かいお言葉、ありがとうございました。若いときには、運動会などでも足が速く、出身の広島の海での体育行事などでは長時間元気に泳いでいたという母も、今は介助してくださる方が必要となりました。牧師夫人として長く歩んできた母は、知人・家族ひとりひとりの名をあげて、祈っていてくれます。
     室井摩耶子先生は、ピアノを通してたくさんのかたにすてきな語りかけをしてくださっていること、本当にすばらしいお働きですね。私の住む岐阜市では、信長祭り、ふるさと高山市では、秋の高山祭りが間近です。秋も進行中・・・どうぞ、お風邪などお召しにならないでお健やかでご活躍くださいますように。 芸術の秋 ・・・一年の中でもすてきなシーズンを感謝しつつ。

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  2. 室井摩耶子さんこんにちは。文庫本のご本を読みました。とても面白かったです。以前、テレビ番組で一度お見掛けして、ピアノの同じ旋律を模範的な引き方と、情感を込めた引き方とをご披露して、取材記者さん達に「どお♡」と伺っていたのがとてもチャーミングで印象的でした。ご本の中で、「ピアノのレッスンをつらいものと生徒に思わせたら先生失格ね!」という言葉が、とても共感できました。コンサートをぜひ聴きにいきたいな…と思う今日この頃です。     みろくしろうさぎでした。

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    1. みろくしろうさぎ さんへ
      コメントありがとうございました。
      本を読んでくださってありがとうございます。
      ”音楽って本当に面白いですね”
      また音楽会やCDでお目にかかれるのを楽しみに。
      室井 摩耶子

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